理学部

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理学部は、人間・社会・地球環境を念頭に置いた幅広い一般教養・社会常識を背景にして、 真理に対する深い感動と畏敬をもって自然科学の基礎知識を習得し、社会で実践する能力を有する人材の育成を目的としています。

Topics

2020.12.02学科レポート
特別研究発表会が行われました!
2020.12.02学科レポート
学科HPをリニューアルしました!
2020.11.30学科レポート
大学院生が優秀発表賞を受賞!
2020.11.26学科レポート
理科分野卒業研究中間発表会開催
2020.11.26学科レポート
1年生親睦会開催

学部長からのメッセージ
「一緒に科学」を学んでみませんか。

 2020年1月に始まった新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、これまでの世界で日常的であったグローバルな人の交流、グローバル経済・産業、そして我々の社会生活に対して想像を超える変革を迫ってきました。その中で、我々が安全安心を確保しながら社会活動を再開・継続する為には、社会全体の細部にまで至るデジタル化、ECMOやワクチン開発に代表されるメディカル・バイオテクノロジーの"State of the art"を現場に届けること、そして新たな人類社会を想像し実践できる教育者養成が必要となっています。

 岡山理科大学の理学部は、数学、化学、物理学、生物化学、臨床生命科学そして動物学の学問分野を通じて、基礎・応用の両面から社会を支える教育・研究そして人材育成を行っています。理学部は「分科の科学」としての最先端性と学際的科学が共存する学問の府です。私たち理学部の各学科の特徴は、次の通りです。

  • 応用数学科は、数学の教員を目指す学生がたくさん集まります。また情報系企業で活躍する人材も育成しています。
  • 化学科は、新素材開発、発光材料、電池材料といった機能性材料の創造を通じて社会貢献を目指す人材の育成を行っています。理科教員を目指す人をサポートするコースがあります。
  • 応用物理学科は、ナノテクテクノロジーなどの科学技術、素粒子・宇宙科学の基礎物理分野をバランスよく学ぶ物理科学専攻、物理学の知識をベースにした臨床工学士養成を行っている臨床工学専攻があります。
  • 基礎理学科は、数学・物理・化学・生物・地学の各分野の研究室があり、それぞれバランスよく学び、理数系教員を目指す学生が集まる学科です。数学・理科と情報の3種類の教員免許が取得可能です。企業就職に向け、専門性を磨くこともできます。
  • 生物化学科は、生命の根源を「生物化学」の手法で解き明かし、遺伝子やタンパク質更には醗酵生産、作物栽培などの自然と調和した環境にやさしい機能性食品や新薬開発の分野で活躍できる人材を育成しています。
  • 臨床生命科学科は、先端医療の世界に理学的なアプローチでせまると同時に、「臨床科学」「基礎医療」の各専門性を養い、21世紀の医療ニーズに対応できる人材を育成しています。臨床検査技師の資格取得可能です。
  • 動物学科は、「人間社会と動物の新しい関係構築」を視野に入れ、解剖学、生理学生態学の基礎分野から動物資源学・保全学という応用分野までを実習。実践を通じて学ぶ学科です。

 理学部共通科目として、理数系教員養成プロジェクト科目を用意して、中学校・高等学校の理数系科目の先生を目指す学生さん達のサポート体制も整えています。
 
 さて、理学部の学生の皆さん、理系を志す高校生の皆さんに向けて、野家啓一博士著「クーン パラダイム(現代思想の冒険者たち24)」(講談社)に基づいて、理学とは何かについて考えを述べてみます。
 理学=Scienceとは、数学を含む自然現象に問いかけ、観測事実やデータを積み重ね、自らの世界モデル(その時点での科学的常識=通常科学)と照らし合わせることで、自然現象=つまり世界を分析・解釈しようとする行為のことです。携わる人たちをScientistと言います。私もScientistですので、背景調査、装置開発、実験・観測、データ解析、解釈、報告書作成を日々の生業(なりわい)としております。数学から動物学までの理学の分野においても、広範かつ精緻な実証が積み重ねられ、学術的に認められ、体系化されてきた科学業績は知識として蓄えられていきます。「一般に認められた科学的業績で、ある一定の期間、科学者や専門家の認識の枠組み(モデル)を与えるもの」を「パラダイム」と言います。これは、1960年代に登場した科学哲学者クーン博士の「科学革命の構造」で定義された言葉です。クーン博士の言葉を用いて、理学・科学の営みを表現すると次のようになります。まず、学生さん達のような科学者を目指す人たちは、体系化された科学的常識が確立した環境の下で勉強や修行(実験スキルの獲得など)を積み、科学者になっていきます。そして、実際に実験や観測を行い、得られた観測事実やデータは、その時点の「パラダイム」に導かれた研究として解決されていきます。この「科学的常識」と「それに導かれて科学を行う人」を、それぞれ「通常科学」と「科学者集団」とクーン博士は呼んでいます。私の経験から言いますと、日常的な科学研究活動の課題は、ジグソーパズルを組み立てていくように最終的にはほぼ100%がこの通常科学で理解できます。しかし、このパラダイムの中にも僅かなほころび(変則的なデータ:anomaly=アノマリー)が存在します。科学者として最も楽しいことは、このアノマリーがパラダイムでは対処できない事実であり、慎重な実験や観察によって僅かずつですが蓄積していきます。もちろん、通常科学として理解できる「科学者としての能力や知識・技量」は、持ち合わせている必要があります。科学者としての技量や知識量については、理学部の教授をはじめとする教員団が皆さんに教授し、教育します。そして、理学を志す学生さん方は、学年が進むとともに科学者と認められ、「通常科学」を為す集団の一員となります。これが、「科学者集団」です。科学者集団は、パラダイムを共有し、共通言語として理解を深めることができます。
 しかし、この皆さんや私が所属する科学者集団は、蓄積され続けるアノマリーに対処できません。つまり、私たちのパラダイムに危機が生じて、混乱の中に陥ることになり、科学者集団の危機でもあります。しかし、このパラダイムの危機こそがクーン博士の言う「科学革命の誕生」であり、「新たな科学者集団の誕生」、「新たなパラダイムの誕生」に結びつきます。古いパラダイムと新しいパラダイムでは、科学的な概念体系が異なる為「通約不可能性(incommensurability)」の状態となり、対立構造となることもしばしばです。パラダイムに拘束されすぎて、別の言い方をすれば常識や権威にとらわれ過ぎて、アノマリーの出現に気が付かない事、無視してしまうことがあると、科学の進歩はそこで止まってしまいます。もちろん、アノマリーの出現かどうかを判断する際には、しっかりとした科学・学術的バックグラウンドと、最大限の慎重な科学的態度が必要です。
 科学は、伝統(現状のパラダイム内での通常科学)と革新(新しいパラダイムの出現)間の本質的緊張状態によってのみ進歩するということができ、更にクーン博士は「伝統に最も忠実なものこそ、その伝統を乗り越えることができる」とも述べています。
 理学における教員・学生の研究活動では、「通常科学で理解できることを一つ一つ丁寧に解釈し、かつアノマリー(変則事例)を見逃さないように真摯に実験・観測事実やデータに向かい合うこと」を日々繰り返しています。私たち理学の学術研究対象領域は、数学、化学、物理学、地学、生物化学、臨床生命科学、動物学の様々な分野ですが、共通する喜びは時折不意にアノマリーが顔を出し、出会えることです。

理学部長 伊代野 淳