2023.05.18更新理大レポート [岡山キャンパス]
サクラ酵母で造った日本酒を手にする滝澤教授(左)と花房社長(右)
サクラの花から採取した酵母
サクラ酵母で仕込んだタンクの前で出来具合を見る滝澤教授(左)と花房社長(右)
岡山理科大学工学部応用化学科の滝澤昇教授と岡山県赤磐市の老舗酒造メーカー「室町酒造」が、サクラの花から採取した酵母を使って、日本酒を醸造。甘いながらも酸味が強くフルーティーな味わいの清酒が出来上がりました。今夏には岡山市内のデパートなどで試験販売される予定で話題を呼びそうです。
滝澤教授は発酵工学が専門。主に植物から乳酸菌や酵母を採取し、発酵食品の開発に取り組んでいますが、今までにサクラだけでなく、マスカットやコスモス、ツバキなどから酵母を採取し、お酒やパン作りなどへの利用について2015年ごろから研究。酒造にはサクラから採取された酵母が適していることが分かり、アルコール生成能やアルコール耐性などから実際に使えそうな2種類の酵母に絞り込んで、今年1月、旧知の室町酒造社長の花房満さんに「この酵母で日本酒を造ってほしい」と打診しました。
甘酸っぱいフルーティーな味わいに雄町米の旨味
若者の日本酒離れに頭を悩ませていた花房社長は、自社を代表する銘柄「櫻室町」と同じ桜であり、この酵母で「若い人が飲みやすいカジュアルな新しい日本酒が出来れば」との思いから快諾し、2種類の酵母の提供を受けて酒造りに着手。このほど出来上がった白金色のお酒を飲み比べ、アルコール度数8%と低アルコールで、甘酸っぱいフルーティーな味わいと雄町米由来の旨味が相まったものに仕上がった方を試験販売することにしました。
「日本酒を飲んだことのない方々にも受け入れやすいはず」と花房社長
“新商品”は従来の清酒と同様、酒造りに適した赤磐産の雄町米を使い、環境省の全国名水百選に選定されている地元の「雄町の冷泉」を仕込水として仕込んだ自信作です。花房社長は「日本酒を今まで飲んだことのない方々でも受け入れやすいはず。試験販売の状況をみてからですが、来年度から本格販売し、海外展開も考えたい。少しでも多くの方々に喜んで笑顔になってもらえたら」と熱い思いを語ります。
「予想以上にいいものが出来た!」と滝澤教授
一方、滝澤教授は「7年越しの夢がかなった。ドイツワインのような甘酸っぱさと旨味が特徴で、予想以上にいいものが出来た。これで日本酒の新たな楽しみ方が広がればうれしい」とサクラ酵母のお酒に期待しています。