地元は東京。高校の頃はずっと、東京の獣医系大学に入ることを夢見てた。
でも結果は不合格。
合格発表の日、目の前が真っ暗になるような気がして、しばらく何も考えられなかった。
夢に向かって走ってきたつもりが、いきなり大きな壁にぶつかったんだ。

そんなとき、今治市にある祖母の家の近くに岡山理科大学の獣医学部があることを知った。
東京から遠く離れた愛媛県。正直、不安もあったけど「ここで挑戦しよう」と決めて進学を選んだ。
新しい場所での暮らしが始まった瞬間だった。
今治市に来てまず感じたのは、街の静けさ。
都会の喧騒がない分、落ち着けるけど、遊ぶ場所も少なくて「このまま毎日退屈するのかな」と思った。
でも、今治キャンパスの大学祭「ゆめいこい祭」の実行委員に飛び込んで、仲間と夜遅くまで準備をしたり、
部活で汗を流したりするうちに、気づけば退屈なんて言葉は消えていた。仲間と一緒に過ごす時間が、自分を前に進ませてくれた。

なかでも忘れられない体験がある。
骨格標本作りだ。
最初はただの骨の集まりにしか見えなかったのに、
ひとつひとつを組み合わせていくと形と機能がぴたりと合い、美しい構造が浮かび上がってきた。
思わず息をのんだ。骨は部品じゃない。命を支える、精巧な仕組みそのものだった。
東京で夢破れたあの日には想像もしなかった出会いや経験が、今治キャンパスにはある。
挫折から始まったこの道が、今は確かに自分を獣医師という夢へと近づけている。これからも一歩ずつ、この地で歩んでいきたい。

