知覚画像処理技術で高齢者の視覚をサポート
上田 千晶 (うえだ・ちあき)講師
「人間の目にも老化現象があって、目に入ってくる光の量が減ってきます。それが色によって光を取り込む量が違って、青系の色からどんどん見えにくくなっていくという特性があります」。専門で研究しているのが知覚画像処理。特に高齢者が見えにくい色を補正して見えやすい画像に処理することです。
そのため、たくさんのお年寄りの見え方のデータを元にシミュレーション。それをスマートフォンのアプリケーションとし、カメラと連動させて撮影したら高齢者向けの色に変換して出力する――。このアプリが完成すれば、お年寄りが文字や標識をしっかり読めるうえ、ネット通販でも安心して衣類などを選べそうです。
「現段階では、まだ変換プログラムの計算に時間がかかったり、明暗を調整したりするので高速化が課題です」としながらも、「若者の見え方も損なわないような形で、青系は青系として色自体は変えない方向でやっています。見えにくいからと言って、元の色を変えてしまったら元も子もありませんから」と滑らかな口調で続けます。
2017年、山口大学大学院理工学研究科で博士号(理学)を取得後、岡山理科大学へ。理大生の印象について、「真面目な学生が多いと思います。みんなしっかり真剣に聴いてくれる。指示されたことは頑張ってやってきてくれるし、分からないところは個別にしっかり聴きに来る。とてもいいと思います」と柔和な表情で続けます。
色彩を研究テーマとしたのは、「子どもの頃には何十色もある色鉛筆を使い、色選びを考えながらイラストを描くのが好きでした。もともと色に関することに興味があったので」。大学院時代には、色に関する幅広い知識や技能を問われる色彩検定で1級を取りました。
また、パソコン画面とプリンター印刷の色の違いを補正するソフトウエアの開発も視野に入れています。「ディスプレイはレッド(R)・ グリーン( G )・ ブルー(B)の3色の光源で色を作ります。一方のプリンターはシアン(C)、マゼンタ( M )、イエロー(Y)、ブラック(K)で表現できる色。そもそも方式が違うので、一方の方式に存在しない色は、それに近い所に無理やり持っていく訳です」と説明。
「デジタル画像の色は3次元の座標で表されますが、その座標上で近い色と人間の感覚での似ている色はやはり違うんです。私は人間の感覚寄りに変換する色を与えたいと思っています」と言葉が熱を帯びてきます。「感覚は個人で違うので、色見本のようなパレットを使い、色と感覚を調整しながらユーザーにマッチしたソフトウエアが出来ないかと考えています」
ソフトな雰囲気を漂わせながらも、芯の強さを感じさせる上田講師。理大に新しい風を吹き込んでくれそうです。
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