世界遺産・地域遺産の研究をまちづくりに活かす
八百板 季穂(やおいた・きほ)准教授
レブカの町並み
「遺産というのは何百年にもわたって、その時々の人たちが守ってきたものなので、地域の人たちに対して意味をもたらし続けなければ存続できない。その関係性を築くとともに、遺産をまちづくりに活かすには、経済活動にも貢献できるような仕組みをつくることが大切です」
2011年北海道大学大学院で博士号(観光学)を取得。専門は、文化遺産マネジメント。コミュニティを基盤とする遺産保全で、遺産保全、観光開発、コミュニティ開発の3要素が相乗効果的に推進されるための仕組みを模索。イコモス(国際記念物遺跡会議)やJICA(国際協力機構)とも連携して世界遺産の保全活動に取り組んでいるだけに、一言々々に熱がこもります。特に南西太平洋のフィジーで、19世紀の植民地建築が残る世界文化遺産「レブカの歴史的港湾都市」には、毎年一度は足を運んで、住民たちと保全に向けた話し合いを続けています。
フィジーの住民たちとのワークショップ
レブカを訪れたのは世界遺産に指定される7年前の2006年。恩師の北海道大学・観光学高等研究センターの西山徳明教授や本学建築学科の江面嗣人教授らとともに基礎調査を進め、ユネスコの諮問機関として世界遺産登録の審査などを行うイコモス(国際記念物遺跡会議)に提出する資料作りにも協力。JICAの草の根技術協力プロジェクトを実施し、まちづくりに取り組んだ。
「木造建築が多く残っているので、日本でやってきた町並み保存の技術、知識、経験が応用できるだろうと考えて、深く関わることになりました」。JICAのプロジェクトとして、遺産の保全と観光プログラム作成にも携わり、日本の宮大工の協力を得て修復の技術指導を行う一方、観光ガイドの育成にも努めました。
現在ではフィジーの国立大学と連携し、保全に向けた人材づくりにも取り組んでいます。
「やっぱり、地元の人たちが自分たちで考えて、自分たちがどうしていくのか、ということを決めて文化財を守っていってもらうのが一番ですから」
レブカのほか、海外ではエチオピアの世界自然遺産「シミエン国立公園」、ペルーのインカ帝国以前の都市遺跡「クエラップ」の保全に携わり、国内ではいずれも重要伝統的建造物群保存地区に選定されている福島県南会津郡の江戸期の宿場町「大内宿」、沖縄県・八重山列島の「竹富島」などの景観保全活動にも取り組んでいます。
そんな八百板先生について、学生たちからは「何でも親身に教えてくれ、とても頼りにしています」との声が上がります。
「理大は頑張る学生が多いですし、まじめです。私の場合、相手がいる地域で一緒に調査をするので、地域の人の顔が見えると、学生もやる気を出してやってくれます。一緒に地域、社会が抱える問題を共有して、課題解決のために学生たちが頑張ってくれているのがうれしいです」。眼鏡の奥の柔和な瞳が、キラリと輝きます。
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