教育・研究編14

教育・研究編14

家庭からコンセントが消える?! ワイヤレス給電の旗手

理学部応用物理学科
石田 弘樹(いしだ・ひろき)准教授

電気自動車の充電も安全・簡単に


 日本と米国で特許を取得した血流解析装置

 「近い将来、家庭からコンセントが消えますよ」。確信に満ちた表情できっぱりと石田准教授。コードを使わず電気を送る非接触給電、特に低周波による非接触給電のパイオニア的存在です。既に複数の大手メーカーとの共同研究で、家電用のワイヤレス給電装置は実用化に向けてカウントダウンに入っているそうです。

 洗濯機や、冷蔵庫、テレビ、パソコンなどの電源コード類に煩わされた経験はどなたにもあるのではないでしょうか。それがなくなれば部屋の中は随分すっきりします。普及が進む電気自動車も停車しておくだけで充電が可能で、安全でしかも簡単になります。

高周波より安全な低周波を利用


 非接触型給電装置のデモ機を操作する石田准教授

 その仕組みは「磁気共鳴方式」と呼ばれ、距離を置いた二つの電磁コイルを対向させ、一方のコイルに交流電流を流し、もう一方を同じ共振周波数となるよう調整して、二つのコイルを共鳴させ、電力をやり取りするという方式です。
 
 便利で快適な生活。とはいえ何百ワットという強力な電磁波が空中を飛んでいても人体に影響はないのでしょうか。「周波数が20kHzといった高周波の健康被害は報告されていますが、WHO(世界保健機関)は『400Hz以下の低周波の磁場による健康被害は疫学的に確認できない』としています」と石田准教授。石田准教授は、人体への影響も考慮して400Hz以下を選択しているそうです。
 
 さらに、低周波の磁場は、金属などの障害物を透過するといった利点がありますが、コイルが大きくなって装置が重くなるなどの欠点があります。企業とタイアップして「改良に改良を重ねて」出来上がったのが重さ180gの装置です。5年前の開発当初は15kgだったのに比べると、何と83分の1。これで120ワットの電力を出力できます。

コンセントの次は電柱?

 少年時代からラジオ作りなどの電気工作に夢中で、「秋葉原にも足を運んだ」という石田准教授。もともとの専門は血流解析。レーザー光を使った血流計など8個の特許を出願・取得しています。「光も電磁波も同じ波動なので技術の応用です」。さらりと言ってのけます。

 ワイヤレス給電の将来は? 「当面は家電などへの対応ですが、将来的に電池の性能が上がれば、交差点に埋め込んだ給電装置の上を通過するだけで電気自動車に瞬時に充電することも可能になります。装置を道路に埋め込めば、コンセントの次に電柱が姿を消すことになるかもしれません」。眼鏡の奥のきりっとした目がキラキラと輝き出しました。


 ワイヤレス給電シミュレーターによる磁場の計算結果

略歴
2000年 長岡技術科学大学工学部卒業
2005年 長岡技術科学大学大学院工学研究科博士課程修了
2008年 富山高等専門学校電子情報工学科助教
2010年 富山高等専門学校電子情報工学科准教授
2015年 岡山理科大学理学部応用物理学科准教授