教育・研究編12

教育・研究編12

ラーメンのスープをディーゼル燃料に

工学部機械システム工学科 近藤 千尋(こんどう・ちひろ)准教授

「もっと他に研究テーマがあるのでは」との批判も

 「ラーメンスープからエンジンの燃料を作る」と聞いても、「ほんまかいな」というのが大方の受け止め方ではないでしょうか。「あんなもんでホントに車が走るの?」と思われても仕方ありません。でも本当なんです。
 2014年の着任以来、このテーマに取り組んでいるのが近藤准教授。「最初の頃は、誤解されて『もっと他に研究することがあるんじゃないか!』と叱られたこともありました」と苦笑交じりで明かします。
 近藤准教授は前任地の滋賀県立大学時代から、廃食用油などをディーゼルエンジンの燃料(バイオディーゼル=BDF<Bio Diesel Fuel>)とする研究で知られる同大学の山根浩二教授や河﨑澄准教授とともに、BDF研究に取り組んできました。BDFは化石燃料の代替燃料として注目されていて、軽油に5%まで混合してもよいことが法律で認められています。
 ところが、国内の年間軽油消費量約3300万kLのうち、認知されているBDFの生産量はわずか1.5万kL。単純に計算しても5%の155万kLはいけるはずですが、極めて少ないのが現状です。家庭系の廃棄油を回収できたとしても年間十数万kLに過ぎません。

1杯あたり10mlのBDF製造に成功

 そんな中で、着目したのが年間数十億食は消費される身近なラーメンスープの油脂。通常は廃棄されますが、「何とか再利用できないか」と考えました。
 2014年に研究がスタートし、学生たちは数十種類のカップラーメンを食べ続け、豚骨系であれば残り汁1杯から油脂を分離させて化学処理すれば、最大10mL程度のBDFが製造できることをつかみました。
 2年目はコスト評価です。製造にかかったエネルギーとBDFのエネルギーを比較すると、1対5で十分見合うと判明。さらに実際にディーゼルエンジンで使ってみると、燃焼効率は普通の軽油と比べて遜色ありませんでした。
 3年目の2016年には、ラーメンの残り汁から効率的に油脂を回収する方法を学生が見つけ出しました。底部分にコックがあるバケツを使い、余計な水分を排出して、スープ上部に浮いた油脂だけを回収する方法です。

「資源循環型の社会に貢献できれば」

 2017年には実際に岡山市内のラーメン店2店の協力を得て、残り汁を回収して試してみると、カップラーメンとほぼ同様の結果が得られました。
 「ラーメン店は1店舗で1日数百杯出るそうですので、1杯で10mL取り出せるとして、ざっと1カ月で100LぐらいBDFが製造できる計算です」と近藤准教授。ちょっと大げさですが、隠れた「都市油田」とも言えそうです。
 挑戦はまだまだ止まりません。油脂をBDF燃料にするだけではなく、今度はラーメンの丼の底に沈殿している食品残渣を使って、ガス燃料にできないかと研究を進めています。
 「この研究が資源の循環する社会に貢献できればと思います。さらに、できるだけ廃棄物の少ない社会につながっていくきっかけの一つになったらと期待しています」
 ラーメンを食べ終わった後は、近藤研究室のあくなき挑戦にも思いを馳せてみて下さい。

近藤准教授 略歴
2009年 京都大学大学院エネルギー科学研究科エネルギー変換科学専攻・博士後期課程修了
 〃 千葉大学大学院工学研究科特任研究員
2010年 滋賀県立大学工学部機械システム工学科助教
2014年 岡山理科大学工学部機械システム工学科講師
2019年 岡山理科大学工学部機械システム工学科准教授