高分子の“かたち”を制御した高性能材料の創出と機構解明

高分子の“かたち”を制御した高性能材料の創出と機構解明

理学部化学科 大坂昇

 高分子は繊維やゴム、医薬品、電池材料、半導体など様々な分野において日用品から最先端素材として用いられており、現代社会において金属やセラミックスと並ぶ3大材料の1つとなっています。高分子は約100以上の分子が結合した巨大分子であり、一本の紐のような“かたち”をもちます。 実際には、この“かたち”には高分子一本の形状だけでなく、多数の高分子が集合して形成するより高次の構造も含まれ、高分子の“かたち”はナノメートルからマイクロメートルに至る様々な階層構造からなっています。高分子の性質は構成分子の化学的な性質と“かたち”により決定され、高分子材料の性能を最大限に引き出すにはこの“かたち”の制御が欠かせません。以下に当研究室で行っている高分子の“かたち”を様々に制御・利用した研究例を2つ紹介します。

(1) 結晶性樹脂との相溶ブレンドによるゴムの同時的な高弾性化・高強度化・高延性化
 
 異なる高分子同士は特異な相互作用がはたらく場合には例外的に相溶(分子レベルでの混合)することがあります。これまでゴムに相溶する結晶性樹脂は報告されていませんでしたが、極性官能基をもつゴムにフッ素系の結晶性樹脂をブレンドすると非晶領域が相溶し、ゴムの網目と結晶部位が相互に入り込んだ特異な構造を形成することを見出しました(図1)。
 さらに通常は強度と伸びは相反的な関係にありますが、このゴムは結晶性樹脂を加えていくとより強く、より伸びる特徴を示しました。現在は、階層構造と物性との関係、網目が結晶化へ与える影響の理解を目指しています。
 また、この優れたゴムの電池材料への応用や結晶化による新規接着法の開発へと展開を試みています。
図1
(2)低環境負荷な手法によるセルロースナノ繊維の難燃化

 低環境負荷な手法によるセルロースナノ繊維の難燃化セルロースナノ繊維は高度に配向したセルロース分子からなる剛直な結晶部位から構成され、軽くて高弾性であり植物由来であるため豊富な資源から得ることができます。しかし、易燃性で用途が制限される問題がありました。我々は過去に高い難燃性を示すハロゲン元素からなる難燃剤を合成し、それをセルロースナノ繊維の一種であるLCNFの表面のリグニンに修飾することでLCNFの難燃化に成功しました。近年は環境負荷が高いハロゲン元素を用いずにLCNFの形状を維持して難燃化することに成功しました(図2)。有機溶媒も使用しておらず低環境負荷な手法による難燃化を実現しています。現在は、高分子材料との複合化を目指し、最適化を行っています。

図2