2023.08.01更新理大レポート [岡山キャンパス]
好適環境水の大型水槽にメバルを入れる生徒たち
大型水槽の脇に設置されたドラム式水耕栽培槽でアクアポニックスに取り組みます
養殖プロジェクトの概要を発表する生徒たち
大型水槽前で報道陣の取材に答える山本准教授
東工×養殖プロジェクトの概要
岡山理科大学が装置・ノウハウなど全面的に支援
岡山県立東岡山工業高校(東工)の生徒が好適環境水を使って、付加価値の高い水産養殖と植物の栽培を同時に行う、循環型農法「アクアポニックス」に挑戦します。7月31日、岡山理科大学が育てたメバル約50匹が東工の実習室の大型水槽(2・5トン)に収容され、養殖がスタート。今秋には水槽併設の水耕栽培槽で、メバルが排出した窒素、リンなどを養分としてレタス栽培が始まります。理大以外で好適環境水による養殖とアクアポニックスが行われるのは初めてで、高校生たちの挑戦の成果が注目されます。「東工×養殖プロジェクト」と名付けられ、3年の課題研究を中心に5科(機械科、電気科、電子機械科、工業化学科、設備システム科)が連携して研究に取り組んでいます。大型水槽は理大が貸与したもので、養殖のノウハウも提供。昨年度から校内の小型水槽で、好適環境水による試験養殖を行うなど準備が進められてきました。
この日、理大から運ばれてきたメバルは体長約10センチ。理大生物生産教育研究センターで約1年前から飼育されていました。生徒たちがバケツで次々に水槽に放すと、元気よく泳ぎ回っていました。
水槽の隣にはドラム式水耕栽培槽(直径80センチ、幅120センチ)を設置。ドラムの内側には192個の植栽スポットがあり、ここにリーフレタスの苗を植え込んで栽培します。ドラムの中心部には光合成を促すための蛍光灯が配置され、全体がゆっくりと回転し、水槽の水から養分を吸収します。東工によると、この方式は、風通しがよくなるうえ、植栽面積が広くなるなどのメリットがあるそうです。
「工業高校生が今まで開拓していなかった分野に挑む」
プロジェクトチームは温室設計、エネルギー供給、養殖設計、生物生産、濾(ろ)材設計、水質管理の6チームで構成。濾材設計では備前焼を再生利用し、水質管理では企業を訪問して化学分析による手法を学ぶなどしてきました。この日行われた研究概要の発表で、生徒たちはプロジェクトの目的を「SDGsへの関心や理解を深め、持続可能な社会に貢献し、工業高校生が今まで開拓していなかった分野への挑戦」とし、中心メンバーの工業化学科3年、谷口瑞樹さんは「アクアポニックスで商品化できるようなものを作り、東工ブランドで販売できたら」と力強く目標を語りました。
生徒たちの発表に続いて、講演した理大工学部応用化学科の山本俊政准教授は、水産資源を取り巻く環境の厳しさを指摘し、陸上養殖の必要性を強調。さらに「宇宙での養殖がこれからの研究の主力になる。5年後、10年後にはきっとそうなっていると思います。そんな時代に、今回の研究を基礎として研究者、技術者として宇宙へ進出してください」と、“若き研究者”たちにエールを送りました。
(※「好適環境水」は登録商標です)