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世界で初めて恐竜の「がん」を確認 生物地球学部・千葉助教らの研究グループ 

2020.08.06更新理大レポート [岡山キャンパス]

世界で初めて恐竜の「がん」を確認 生物地球学部・千葉助教らの研究グループ 

(上)角竜類恐竜セントロサウルスの復元骨格。赤色が今回試料として用いた腓骨部分(下)骨肉腫を持つ腓骨の標本写真(㊧)とCT画像に基づく標本の3次元復元(㊨)矢印の黄色部分が骨肉腫の領域を示す。 骨格図: Danielle Dufault画。Royal Ontario Museum提供。 © Royal Ontario Museum/McMaster University

                                国際的医学誌に論文掲載
 
 生物地球学部の千葉謙太郎助教が参加する国際共同研究グループが、世界で初めて恐竜に骨のがんとされる骨肉腫があったことを確認しました。論文は8月4日、世界的に権威のある医学誌「ランセット・オンコロジー」電子版に掲載されました。
 
 研究グループはカナダ・王立オンタリオ博物館 (Royal Ontario Museum)、マクマスター大学(McMaster University)を中心としたチーム。骨肉腫が見つかったのは、約7700〜7550万年前に生息していた角竜類恐竜「セントロサウルス・アペルタス」(Centrosaurus apertus)の腓骨(すねの骨)です。もともと、1989年にカナダ・アルバータ州の恐竜州立公園で発見されたもので、骨の端が大きく変形していたため、骨折が治癒したものだと考えられていました。
 
 ところが、オンタリオ博物館の古生物学者、デイビッド・エヴァンス博士、マクマスター大学の病理学・分子医学者、マーク・クローザー教授、骨病理学者のスネザナ・ポポヴィック教授が2017年、骨折とは異なる特徴に気づいたことをきっかけに詳細に検討を始めました。3人は、病理学、放射線学、整形外科学、及び古病理学などの専門家を含む研究チームを編成。医者がヒトの患者の腫瘍の診断をするのと同じ知識・技術に基づいて、問題の化石標本の再検討を行いました。千葉助教は、セントロサウルスの骨薄片の作成と骨組織学的な検討を担当しました。
 
 骨の外部形態の観察・記載を行った後、高分解能コンピュータ断層撮影 (CT) スキャンによって、骨の内部構造とがんの進行度を3次元的に可視化。さらに、標本の薄片を作成し、顕微鏡を用いて骨細胞レベルで観察を行った結果、この骨に見られる病変が骨肉腫であると診断されました。
 また、セントロサウルスの正常な腓骨やヒトの腓骨に見られる骨肉腫と比較した結果、この骨肉腫の持ち主であるセントロサウルスは、死亡時には進行期のがんが、すねの骨以外の臓器にも転移していた可能性が示唆されました。
 
 千葉謙太郎助教の話
 これまで、骨肉腫ではないか、と推定された例はありましたが、ヒトと同じ診断基準で特定されたのは世界で初めてです。恐竜をはじめとする化石動物の病変の診断に今回の研究のように複合的な研究手法が用いられた例は非常に限られており、今回の研究がこれまで曖昧だった化石動物での病気診断の新たなスタンダードとなることが期待されます。人間の病気と過去の病気との関連性を検証することは、今後さまざまな病気の進化と遺伝的性質をより深く理解するのに役立つかもしれません。今後も、最新の分析技術を化石研究に応用することで、恐竜などの絶滅動物とヒトが共通して持つ病気の証拠が数多く発見されるでしょう。
 
●雑誌名「The Lancet Oncology」、論文名は「First case of osteosarcoma in a dinosaur: a multimodal diagnosis」(複合的な手法を用いた恐竜での初の骨肉腫の診断例)。
 以下よりご覧いただけます。
https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(20)30171-6/fulltext#:~:text=Here%20we%20report%20the%20first,which%20dates%20from%20approximately%2077&text=0%E2%80%9375&text=5%20million%20years%20ago.