環境システム専攻
(博士課程)修了
山本 伸子さん
千葉県立中央博物館・植物学研究科研究員
地域のために植生相を調査する
明確な目的でアクティブに活動中
「学部までは“習う”ということに躊躇せず、積極的に学ぶべきです。自分が目指すもの以外も積極的に吸収することが必要です。学んだことは、いつかどこかで役に立つ時が来ます。今すぐどう役に立つかは分からなくても、とにかく学ぶ姿勢を崩さないことだと思います」。まずは、先輩から現役の皆さんへアドバイスです。
現在は、植物関係の常設展の管理、展示資料の補修、企画展への対応などに加えて、県内各地で行われる講座や観察会での解説、県内で採集された押し花や押し葉などの植物等標本をいつでも研究に利用できるよう整理。さらに高等植物研究という自身のテーマも抱えて、多忙な毎日です。
「大学の学部のカリキュラムでは植物や生物関係の勉強だけでなく、考古学や人類学なども学べたことが、今とても役に立っていると感じています。博物館での仕事は、専門の植物のことだけをやっていればよいのではなく、人間とのかかわりや環境問題なども考えなくてはいけません。また、展示の企画などで他分野の人と協働することもあります。大学での広範な学びは必要なことだと思います」
そもそも、生物地球学部に入ったきっかけは?
「“フィールドワークの学科”というキャッチフレーズに惹かれたからです。教室で座ってばかりは嫌だな、外に出られると、これが最大の魅力でした」。入学は生物地球学科の前身・生物地球システム学科の創設3年目。「まだ完成年次を迎えていない学部だからこそ、新しいことにいろいろ挑戦できるのではないか、と期待しました」。エネルギッシュという言葉がぴったりです。
学生時代はフィールドワークに打ち込んで、「修士までに日本全国をほぼ網羅した」という超行動派です。国内だけでなく、中国とネパールにも足を運びました。「ネパールではテント生活を送りながら、ポーターやサポート隊も含めて100名くらいの大所帯の調査に参加しました」
学芸員希望者に何かメッセージを――。
「理系の博物館職員になる場合、学芸員資格の有資格者という要件が付いた採用が増えてきています。しかし、資格を持っているからと言って、即戦力で働くことができるわけではないのです。それぞれの博物館で実務のやり方は違うし、資料の扱い方も違います」。さらに「地方立の博物館は、その地方の人々のため、という視点が欠かせません。どんな植物が生え、どんな特徴がある、ということをきちんと説明できることも大切です。そのためのプレゼン方法や資料の展示方法なども日々研鑽が必要です」。大変そうですが、やりがいはありそうです。
将来は「市町村ごとに調査結果を集約し、“千葉県植物誌”を作りたいと思っています。それから、ヒマラヤ地域の植物では、まだ15%ぐらいしか植物の染色体の構造が明らかになっていません。未知の部分がまだまだあるという世界です。この残りを少しずつ詰めていきたいと思っています」。目の輝きが一段と増してきました。