田中 良さん
林野庁 十勝東部森林管理署
想像を超える壮大な自然に感動!
この感動を変わらぬ姿で未来に残したい。
フィールドワークを仕事にしたくて林野庁へ
動物行動学、生態学を学びたいという思いがあり、大学のホームページでフィールドワークが学びのメインであることを知り、生物地球学科に進学しました。在学中は昆虫生理生態研究室の中村先生のゼミで、ノコギリクワガタについて研究。クワガタはいうまでもなく人気の昆虫ですし、当初は研究しづらいのではという懸念がありましたが、先生に相談したところ快くアドバイスをいただき、研究に取り組むことができました。ノコギリクワガタはオスのアゴの大きさが大中小と分かれ、形もそれぞれ違います。その違いは何によって生まれるのか。温度や太陽光といったさまざまな条件設定のもと、その要因を探りました。
3年生の頃に、公務員の業務説明会に参加。林野庁の担当者と直接お話する機会があり、当庁の仕事の良いところやフィールドワークの業務が多いことを聞き魅力を感じ、採用試験を受けることを決意しました。林学は公務員試験でもマニアックな科目で、試験の参考書もありません。そのため、参考書ではなくいわゆる林業入門書のような、実際に林業に携わる人が読むような本を探し出して熟読。加えて、大学の提携する外部講師と面接の練習をしたり、教養区分の授業を受けたりなどの対策をして、無事合格をつかむことができました。
ワクワクするような自然を次世代に残すために
入庁し十勝東部森林管理署に配属されて2年。こうして働いてみると、やはり想像と実際は違うなと思います。参考本でしか勉強していないので、働きだしてようやく林業の本質を理解し始めたような気がしています。想像とのギャップでいうと、細かいところでは仕事着でしょうか。スーツで出勤して現場に出るときに作業服に着替えるのかなと漠然と思っていたのですが、実際は出勤時から作業服でした(笑)。あとは、北海道の外の寒さと屋内の温かさにびっくり。福岡県出身なので、北海道の冬の寒さに相当の覚悟をしていましたが、思いのほか快適に過ごせて安心しました。
現在は森林官の補助的な業務を行っています。具体的には、現場調査や災害時の林道点検、出入り事業者の現場監督や進捗状況の把握、各所との打ち合わせなど、メインは現場業務です。志望動機のひとつであったフィールドワークに携われていることはとても幸せなことだと感じています。業務の中には小学4年生を対象した森林教室もあるのですが、自然の大切さや森林と生物の関係性など、大学での学びをいかし、すべてを関連付けて説明するように心がけています。また、在学中に動物園でアルバイトをしており、飼育員さんと話すなかで得た知識が業務のふとした時に役立つことも。大学時代のさまざまな経験が今に通じているのだと実感しています。
仕事で一番ワクワクするのは、見たことのない植物や動物に出会った時。北海道はもともと樹種も本土とまったく違いますし、国有林という壮大な自然には、普通では目にすることのないような希少な生き物がたくさん生息しています。鳥類や両生類など、多種多様な生き物が生息していて、日々新しい出会いがあります。
今後、他部署に異動する可能性もありますが、これからも現場に出て直接自然と触れ合える仕事がしたいと思っています。北海道に配属されて初めて現場に出た時、想像を超えるスケールの自然に感動しました。この感動を、次世代にも残したい。何十年たっても変わらない自然の姿を守りたい。自然を前に人間ひとりの力は微力かもしれませんが、周りと力を合わせて、これからも森林の管理保全業務に尽力していきます。