生物化学科の学生のアクティビティ 2

生物化学科の学生のアクティビティ 2

竹内 赴登(はやと) さん(岡山県出身)
理学部 生物化学科 4年

植物と微生物の共生関係を解明したい

 今はどんな研究を?

 もともと微生物と植物の関係に興味があったので、生物化学科に入学しました。研究室を選ぶ時、微生物を扱い遺伝子に関する研究がしたかったので、三井亮司先生・矢野嵩典先生の研究室に入りました。現在の研究テーマは「メチロルブラム」という微生物です。植物の葉っぱからはメタノールが放出されているのですが、この微生物はこれをえさ(炭素源)にします。一方でメチロルブラムはオーキシン、サイトカイニンなど植物ホルモンを分泌して植物の成長を促します。このため、メチロルブラムが共生していると植物は成長が促進されるのです。


 



                            三井教授(右)と研究内容を打ち合せする竹内さん




 

植物の葉っぱからメタノールが放出されている?

 植物が成長する時には細胞も大きくなりますが、細胞が大きくなる時に周囲を覆っている糖質(ペクチン)が部分的に分解されます。この時、メタノールが発生します。ただ人間にとっては微量で、雨水などでも流れてしまいますし、サラダを食べると影響があるなどというレベルのものではありません。

 このメタノールをメチロルブラムはどうやって代謝するのか、それを調べるために、メタノール代謝に関わると予想した酵素の遺伝子を壊してみることにしました。何度も失敗して、やっと3カ月がかりでそれができた時には、思わず「やったー!」と叫んでしまったほどです。予想通り酵素の遺伝子が壊されたことが確認できたメチロルブラムは、メタノールを食べなくなりました。壊れた遺伝子を正常な遺伝子に再び戻すと、元通りになったので、メタノールを食べる上で、この酵素が重要な役割を果たしていることが裏付けられました。こうした研究を重ねて、共生のメカニズムを解明していきます。
 
 

                             メタノールを食べる「メチロルブラム」。下は遺伝子解析

 その研究成果で、「日本農芸化学会」の支部奨励賞(学生部門)を受賞しています。4月からは大学院に進学するそうですが、大学院ではどんな研究を?

 大学院でも引き続き、この酵素の研究を進めていく予定です。メタノールを食べるために必要であることは分かりましたが、これは試験管内での研究です。実際の植物との共生にどのように関わっていくのか、大きなテーマだと思っています。地球上のありとあらゆる植物の上でこの小さなメチロルブラムが働いていて、地球の環境に大きな役割を果たしていると考えると夢が膨らみます。植物の生育を促すという能力も、作物栽培など食糧の増産への応用も期待できると思っています。

 毎日がとても楽しく、ここに来て成長できました。周りの人にも恵まれています。ぜひ、うちの学科に来てほしいと思います。おススメです。