世界でも珍しい雌雄型の蛾(ガ) 奇跡の発見
それは昨年11月のある日、山陽自動車道・小谷SA(東広島市)でのことでした。理大附属高校3年の時、野外研修でバスに乗って宮島水族館に向かう途中でした。どこに行っても虫を探すのが好きな安達さん。たまたま休憩で立ち寄ったSAで、いつも通り虫の姿を追っていた時、自動販売機の前でじっとしている蛾の一種「ウスタビガ」を見つけました。
もしかしてすごい発見かも
安達さんが見つけた雌雄型のウスタビガ。左側がオス、右側がメス。羽を広げた大きさは約8.5cm(倉敷市立自然史博物館提供)
「でも、うちにある標本と何か違う。左右の触角の形が違う。もしかしてすごい発見かも」。そう直感した安達さんは、捕まえてバス備え付けのビニール袋にそっと押し込んで持ち帰りました。
翌日、中学時代から足しげく通っている倉敷市立自然史博物館に持ち込んで、極めて珍しい雌雄型のウスタビガと判明します。しかも、オスとメスの部分が左右でくっきりと分かれていました。
「雌雄型が、とても珍しいことは知っていました。でもまさか自分が発見できるとは思っていなくて、見つけた時は正直信じられませんでした。好きなことを一生懸命続けていたことへの神様からのご褒美だと思います」と安達さん。
オスとメスが左右できれいに分かれている例は「初めて」
倉敷市立自然史博物館・学芸員の奥島雄一さんは「これまで国内で見つかったウスタビガの雌雄型の報告は2例。しかし、いずれも左右に部分的に雌雄の特徴が入り混じっているもので、今回のように真ん中できれいに分かれているのは初めて」と驚きを隠しません。さらに「もし、彼女に見つけられなかったら、このお宝もただのゴミとなって処理されていたか、野鳥か動物のえさになっていたことでしょう」と話しています。
学術的にも珍しい蛾の発見とあって、安達さんは昆虫専門誌に報告記事を投稿したほか、新聞・テレビなどの取材が相次ぎました。
将来は生物と人間の共存を進めていく仕事に
物心ついた時にはセミをつかんで遊んでいたという安達さん。現在は自宅で、羽のないゴキブリをはじめ15種類の虫を飼育して生態を観察しています。
「理大は自然豊かな場所にあり、周囲にはいろんな昆虫が生息していて、トンボやチョウ、クワガタなど、さまざまな昆虫を見ることができます」と刺激的な毎日を送っています。
まだ大学生になったばかり。「動物・昆虫や植物に関する専門的な勉強をしたい。フィールドワーク、エコツーリズムなどさまざまな研修に参加してみたい」と夢が膨らみます。将来については「生物と人間との共存を進めるため、環境アセスメント関連の仕事に就きたいです」ときっぱり。
「地球は巨大な博物館」と位置付けて、フィールドワークを重視する生物地球学科は、安達さんにぴったりです。