理大の栞理大50周年



その2[]  解説

 

気象庁の定義では、微小な浮遊水滴により視程(水平方向での見通せる距離)が1q未満の状態を「霧」といいます。視程が陸上でおよそ100m以下、海上で500m以下の霧の場合は、特に「濃霧」とよびます。一方、視程が1km以上10km未満となっている状態を「靄(もや)」とよびます。

ところで、霧はどのようにして発生するのでしょうか。

広島県北部に位置する三次盆地は、四方を標高400m以上の高い山々に囲まれた、東西約40km、南北約25kmの大きさを持った盆地です(図1)。秋の晴れた夜には、盆地全体を覆うほどの大規模な霧が発生し、日の出ごろには展望台から幻想的な「霧の海」の姿を見ることができます。しかし、そういった美しさとは反面、視程の悪化に伴う交通障害、日照不足などの衛生問題、酸性霧による農作物の被害など、市民生活や環境への悪影響も報告されています。

図1.広島県三次盆地の地形.色と線は,100m毎の等高線を表す.

空気中の水蒸気が凝結して霧の水滴が生まれるためには、盆地の空気が冷える、水蒸気量が増えることのどちらか(または両方)が必要です。これによって空気が飽和状態に達し、凝結現象が起こりはじめます。

夜間に三次盆地が冷やされる強さを計算してみました(図2)。夜間の放射冷却によって理論上どのぐらいまで気温が低下し得るかを示した「最大可能冷却量」とよばれるものです。計算には、岡山理科大学生物地球学部生物地球学科の大橋研究室が2007年に独自に観測した気象データを用いています。すると、最大可能冷却量が大きくなった日は、大規模な霧が発生していることが読み取れます。つまり、盆地全体にまで広がる大規模な霧が発生するためには、盆地が冷えることが重要と言えます。しかし、図2のグラフをよく見ると、最大可能冷却量があまり大きくなくても大規模な霧が発生した日もあります。2007年10月28日と11月2日は、実は前日に降雨が見られた日です。したがって、雨が降った時のように空気中の水蒸気量が豊富な条件下であれば、強く冷えなくても大規模な霧が発生することがわかります。

図2.2007年10月24日から11月5日に観測された気象データを用いて計算された最大可能冷却量(ΔTmax).
このような大規模な霧は、盆地全体で同時に発生するわけではなく、ある地域から特によく流れ込んでくる様子を、大橋研究室の観測から確認できました(図3)。盆地北西の口に相当する地域で最初に霧が発生し、その後徐々に盆地内へと発生地域が広がっていきます。熱赤外画像カメラを利用した霧の観察によって、盆地北西部から霧が盆地内へと流れ込んでくる様子がわかりました。なぜ最初に北西部で発生するかと言うと、露点温度が他の地域に比べて高いことに原因があるようです。露点温度とは空気を冷やしていって飽和に達し凝結が起こる時の温度なので、露点温度が高いということは水蒸気量が豊富であることを意味しています。つまり、盆地北西部の空気は何らかの理由によって湿潤な大気場にあることが考えられますが、現在調査中です。
図3.2007年11月3日夜間における大規模霧の発生分布(左列)と気温・露点温度分布(右列).発生分布(左列)では,観測された湿数を用いて霧の発生が推定された地点を水色の丸印で示している.気温・露点温度分布(右列)では,地上で観測された気温を色で,露点温度を実線で示している.
この内容は、岡山理科大学大学院総合情報研究科生物地球システム専攻2008年度修士論文「広島県三次盆地における大規模霧の形成機構の解明−多面的観測によるアプローチ−(草本真志)」による研究成果をまとめたものです。
 

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