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【先生コラム 探究のまど】第6回 -季節を感じる心-

2025.02.27更新学科レポート
[初等教育学科][中等教育学科]

【先生コラム 探究のまど】第6回 -季節を感じる心-

~教育学部の先生たちが日々の中でふと感じたことをつぶやくコラムです~

 私たちは自然の恵みを頂戴しながら生活を営んできました。その一つに色があります。
色は化学染料が登場するまで、植物の葉や根、樹皮などから色を抽出し糸や布を染めていました。その歴史は古く、日本では縄文時代にはすでにその技術があったようです。染められた色には名前が付けられました。日本伝統色の色名には、唐紅、桃、浅葱、苅安、金茶など多数あります。甕覗(かめのぞき)というほんのり灰色がかった淡い青色があります。名前の由来は藍で染めるときに使用した甕にちょっとだけ(甕を覗いたくらいの時間)浸しただけの色、または甕の中の澄んだ水に映った空の色とも言われています。色名には植物などを由来とするものだけでなく、甕覗のように人の行為や自然の景色などを名前にした色もあるのです。
 平安時代の貴族社会では色の組み合わせを季節ごとに楽しみ、その組み合わせに名前を付けていました。「かさね色目」といいます。例えば、下(裏)に紅(赤)、その上(表)に白を重ねると白の下から赤が透けて見えます。「雪の下」、「初雪」と名付けられています。これは赤い梅の花に初雪が積もった様子を表しているそうです。また十二単の袖口には五色と一色(一番下に着る着物の色)の六色が見えます。この組み合わせにも「紅梅の匂」や「青紅葉」など季節を表した名前が付けられています。色選びはその人の個性やセンスを表しました。さぞかし悩んだでしょうね。
 季節の変化を感じ取り、季節を色で表し、色を飾ることを楽しむ。そんな文化が日本にはありました。しかし失われた文化ではありません。色を組み合わせることはかつてのように特定の人々だけの楽しみではなく、今では誰でも楽しめるものとなりました。色で季節を感じ、色を楽しむ思いは千年経った今も続いています。 参考文献:八條忠基 2020「有識の色彩図鑑 由来から学ぶ日本の伝統色」淡交社(初等教育学科 妻藤 純子)