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モンゴルで初の魚類養殖、コロナ禍乗り越え「大きな成果」

2022.04.28更新理大レポート [岡山キャンパス]

モンゴルで初の魚類養殖、コロナ禍乗り越え「大きな成果」

大きく育った交雑ハタを抱えるアマルトゥブシンさん。中には7.5キロを超える大物も

成長度合いは極めて良好、生産性、生残率も申し分なし
 2年余にわたる研究結果報告


 モンゴルでの好適環境水を用いた海産魚の養殖研究が終了したのを受けて、4月18日、岡山理科大学岡山キャンパスで、報道関係者向けの研究結果報告会見を行いました。工学部応用化学科の山本俊政准教授は、成長度合いが極めて良好だったうえ、生産性、生残率ともに好成績だったことを挙げて、「モンゴル初の魚類養殖は成功した」と強調しました。

 報告会見には山本准教授のほか、平野博之学長、共同研究に取り組んだ「KITAGAWA株式会社」(本社・静岡市)の北川雅弘代表取締役社長が出席。報道側は新聞・テレビ計10社が参加しました。

 研究期間は2019年9月23日~2021年11月30日。モンゴルの首都・ウランバートルのサテライト・オフィスに設置した10トン水槽2基、1トン水槽4基で、マハタ属同士を掛け合わせた交雑ハタの稚魚500匹を養殖しました。冬には氷点下40度近くまで下がる極寒の地とあって、火力発電所の熱源を利用して水温を安定させられたことが、好成果につながったようです。

 山本准教授らによると、稚魚はわずか10カ月で平均体重1キロとなり、2年で3キロにまで成長。海水陸上養殖の類似魚種に比べると成長度合いは数倍になりました。また、1立方メートルあたりの生産性は61.49キロで、海面養殖の約6倍という高密度養殖を達成しました。生残率は10カ月で85%、2年で82.8%。総生産量は1229.82キロでした。
現地政府機関及び在モンゴル日本大使館はじめ、各国大使館やすし店、レストランなどに提供して、試食してもらったところ、大好評だったと聞いています。

 ただ、養殖は困難の連続でした。コロナ禍で、2020年3月以降は日本から現地に入ることができなくなったため、それ以前にKITAGAWAの社員で、研究員として派遣され、好適環境水による養殖を学んで帰国していたモンゴル人のバトドルジ・アマルトゥブシンさんが、給餌や魚、水の管理などを主に担当。SNSで連日、養殖データを岡山に送り、山本准教授らがその都度アドバイスしてしのいできました。
 日本からの貨物が国境で足止めされ、エサや水質分析試薬が届けられなくなった時には、KITAGAWAの社員が手荷物に小分けして運びました。緊急用の発電設備がなかったため、急きょ日本から発電機を送りました。「小さなトラブルも含めると数えきれない」といいます。
 そんな中で関係者に衝撃を与えたのは、北川社長の古くからの友人で、多方面にわたって養殖研究をサポートしてくれていたハリューン・アンガルさんが昨年秋、病死したことでした。「アンガルさん」と呼ばれて親しまれていた男性でした。山本准教授は「彼がいたからこそ、研究がここまでスムーズに進んだ」とその存在を惜しみます。

 山本准教授は「この研究に関わった学生たちの努力と、現地のスタッフの並々ならぬ努力、こうした総合力をもって、砂漠の国で海の魚を養殖するという前例のない挑戦を成し遂げることができた」とねぎらい、「モンゴルの食生活を変えられると自信を深めた。やはりおいしいものは、国境を越えて受け入れられることが分かった」と総括しています。
 今後の展開について、北川社長は、モンゴルでの出荷、中国への輸出、さらに日本国内での生産や実装化に向けて、もう一歩踏み込んだ研究を進めていきたい意向を明らかにしました。
 モンゴルでの実証実験はひとまず終了しましたが、今後、社会実装に向けて、共同研究を継続していきます。


モンゴルで初の魚類養殖、コロナ禍乗り越え「大きな成果」

稚魚を水槽に入れたのは2019年9月でした

モンゴルで初の魚類養殖、コロナ禍乗り越え「大きな成果」

共同研究の報告会見に臨む平野学長、山本准教授、北川社長

モンゴルで初の魚類養殖、コロナ禍乗り越え「大きな成果」

報告会見に詰めかけた報道関係の皆さん