岡山理科大学 平成30年度事業計画の策定にあたって
今年4月、今治キャンパスに獣医学部がスタートしました。“One World, One Health”&“One Medicine”という新しいコンセプトのもとで、動物とヒトの健康を科学する教育研究拠点を創りあげていくことになります。2県にまたがるキャンパスをもつようになるため運営面では複雑さが増しますが、本学の目指す将来像は一昨年度に制定した「岡山理科大学ビジョン2026」のとおりで変更はありません。
「ビジョン」でも謳われているように、大学運営の最重要課題は内部質保証システムの構築です。内部質保証とは、「PDCAサイクル等の方法を適切に機能させることによって、質の向上を図り、教育・学習その他サービスが一定水準にあることを大学自らの責任で説明・証明していく学内の恒常的・継続的プロセス」(大学基準協会)と定義されます。この2年間、「ビジョン」の制定だけでなく、①「アクションプラン(中期目標・中期計画)」の策定やそれに基づく単年度事業計画の作成、②全学評価・計画委員会など自己点検評価制度の再構築、③目標管理型の教員個人評価制度の導入などを行ってきました。これらの施策は、教育研究の質を直接向上させるというよりは内部質保証システム確立のために不可欠な基盤整備であったと言うことができます。PDCA サイクルを本格的に機能させ、質を向上させる具体的な活動はこれからです。
今年度は活動のキーワードとして「見える化」を掲げたいと思います。目標を立てて問題を解決しようとすると、次の5つのステップの「見える化」が求められます。①現状を見えるようにする、②目標を見えるようにする(共有できるようにする)、③目標と現状のギャップを見えるようにする、④目標までの具体的なアクションを設定する(実現への道筋の見える化)、⑤行動の過程で目標に向けた到達状況(進捗)を見えるようにする。このように「見える化」は単純そうで実はかなり複雑なプロセスを含んでいます。「見える化」は問題を顕在化させ、解決に導くための有力なツールとなります。
近年、大学教育においては「先生が教える」から「学生が学ぶ」へ重点が移っています。そこでは、学生の学修成果が実際にどの程度あがったのかが問われます。本学でも中期計画のなかで、「入学から卒業までの成長、学修成果を総合的に可視化し、卒業後も活用できるトータルキャリアポートフォリオを導入する」ことを掲げています。学修成果の「見える化」(=可視化)のプロセス自体が、学生と教員との間でインタラクティブな関係を生み出し、学生の深い学びをもたらします。「見える化」は質向上の面でも大きな可能性を秘めていると言ってよいでしょう。
「見える化」を合言葉にして、次のような特性をもつ大学を目指したいと思います。
- 「見える化」によって、学生・教職員が目標を共有し、主体的に課題解決に取り組む組織風土を醸成する。
- 全学レベルから個人レベルまで、目標設定と進捗過程の「見える化」を推進し、PDCAサイクルを機能させる。
- 見える化」に基づく透明性・客観性のある大学運営によって社会への説明責任を果たす。
岡山理科大学 学長 柳澤 康信