教育・研究編2

教育・研究編2

IBはさまざまな能力と才能を引き出すプログラム

グローバル教育センター 髙木 志保(たかぎ・しほ)講師

国際的な教育プログラム「IB」(国際バカロレア)。理大は昨年、IB教員養成コースを開設しました。学部にこの課程があるのは理大と都留文科大学(山梨)だけです。2年目を迎えて本格的な授業が始まり、約130人の学生が受講。3年後にはIB教員資格を持つ学生が卒業します。今年6月、グローバル教育センターに着任した講師の髙木志保さんに早速、登場してもらいました。

帰国して挫折を経験

眞砂教授(右)と講義の打ち合わせをする高木さん

 兵庫県出身。化学関係の会社に勤務する父親の転勤で、3歳から12歳までベルギーで生活。中学1年から日本に戻り東京都内の中学校に転入しましたが、「数学も社会も理科も、全くついていけませんでした」と振り返ります。それまで学力には自信があっただけに「ショックでした。このまま落ちこぼれて行くのかな、と本当に悩みました」。2年後、父親の転勤で今度はマレーシアに引っ越したのが転機でした。

IBと出会い「勉強の楽しさ知る」

IBと出会ったクアラルンプール・インターナショナルスクールの卒業写真(前列の左から2番目が高木さん)

 首都・クアラルンプールのインターナショナルスクールに入り、IBプログラムと出会いました。日本の教育とは全く違います。――テストは時間で区切らず、超過したら「放課後、続きをやりに来なさい」。穴埋めや選択ではなく「第2次大戦はどういう原因で起こったのか、さまざまな背景を含めて説明しなさい」と論述させるなど、知識の深さを問う形式ー。「もちろん暗記はありますが、時代背景や文化的背景を含めた知識を引き出す、新しい学びに出会うことができたことで、勉強がすごく楽しくなりました」。ここでIBのDP(ディプロマ・プログラム)の資格を取得しました。

「IBは、ある面だけで測るのではなく、いろいろな能力とか才能をできる限り引き出してくれるプログラムです」と髙木さん。

 文部科学省が進めている指導要領の改訂でも「主体的・対話的で深い学び」を行うために、プロセスと成果を明確にしたカリキュラムや評価システムが重要と位置付けています。「教育内容」よりも「教育方法」に注意を払っていくという方針で、グローバル教育センターの眞砂和典教授は「この考え方はIBにも通じるものです」と説明します。

「チャレンジ」こそ人生の原動力

IBディプロマ(資格取得証明書)

 現在、IB教育に取り組む学校などは世界の140以上の国・地域で5000校近くに上り、国内にもインターナショナルスクールを含めて46校があります。IB教員の資格を取得すると、言語面のハードルなどをクリアすれば、こうした学校で教鞭を執ることができるようになります。「IB教員にならなかったとしても、IBの授業を受けることで、いろいろな子どもたちの可能性を引き出せる先生になれると思います」と髙木さん。

 「IBが目指す学習者像の中に、失敗を恐れず果敢にチャレンジしていく『リスクテイカー』があります。それを自分が生きていく原動力にしています。理大に来たのもチャレンジです」。大きな瞳が一段と輝きます。

略歴

2001年 クアラルンプール・インターナショナルスクール卒業(IBディプロマ取得)
2005年 ボストン大学心理学科・文化人類学科をダブルメジャーで卒業
2007年 コロンビア大学大学院社会福祉学修士課程修了
神戸市のインターナショナルスクール数学教諭
2009年 関西学院千里国際中等部・高等部スクールカウンセラー
2018年 岡山理科大学グローバル教育センター講師