物のパワーで、戦国時代の水質を復元。

豊臣五大老・宇喜多秀家が築いた西日本屈指の名城「岡山城」。昭和20年に戦災で失った天守閣は昭和41年に復元され、現在も岡山市内の観光名所として賑わっている。その岡山城で今、堀の水質汚染が問題になっている。アオコという植物プランクトンが大量発生したことが原因だ。化学薬品や機械を使ってキレイにする方法もあるのが、それだと効果は一時的。そこで齋藤先生は、ヒシという水草の浄水作用に目を付けた。「アオコは、窒素やリンの濃度が高いところに生息します。一方、ヒシは窒素やリンを吸収する性質があるので、ヒシを堀に茂らせれば、窒素・リン濃度が下がり、アオコの発生を抑制できるというわけです」。天守閣を忠実に復元したように、かつての水質を取り戻せるか。斎藤研究室の挑戦が続く。

理学部 基礎理学科
斎藤 達昭 先生

究室で考える、未来の農業

農作物を効率的に収穫するためにまく除草剤。その正体は、オーキシンという植物ホルモン。植物の成長を促す物質だが、一定の濃度を超えると、逆に成長を抑える効果がある。除草剤はその原理を応用しているわけだが、実は、植物内でどのように作用しているのか詳しくわかっていない。林研究室は、そのメカニズムの解明に挑んでいる。「特定の遺伝子に目印をつけて、どのように細胞内に組み込まれているか観察しています」。実験の結果、遺伝子組換えによってオーキシンにまったく反応しない品種の開発にも成功。食糧不足が心配される未来に、収穫率アップの期待がかかる。「ただし、遺伝子組換え植物が生態を壊してしまわないように細心の注意を払っています」。シャットアウトされた空間で、未来の農業は着々と進んでいる。

理学部 生物化学科
林 謙一 先生

球上から、研究室のアイドルを発掘せよ。

織田研究室は、全国各地に生息する小動物をハンティングし、飼育を試みる珍しい研究室。野生動物を飼育し、その特徴を解明することが目的だ。これまで色々な動物を捕獲してきたが、中でも「スンクス(ジャコウネズミ)」というモグラの一種は研究者たちの注目の的だ。「胃の形態が人間に近く、乗り物や酒に酔うと嘔吐します。ラットやマウスはしないので、スンクスを使えば、嘔吐のメカニズムをより詳しく調べられるんです。また、生後1〜3週の間に、母親と子ども達が尾根部をくわえて歩く「キャラバン行動」も特徴的。人間の子どもが、人混みでお母さんの手やスカートの裾をつかむ行動に似ています」。地球上には、私たちの思いもよらない特徴を持つ動物がまだまだたくさん生息している。

理学部 動物学科
織田 鉄一 先生

児がんの新たな診断法は、土の中にあった。

応用微生物学研究室は、微生物の酵素で小児がんの効率的な診断法を開発した。つい忘れがちだが、自然界における「土にかえる」は、微生物による分解。この分解という働きの研究から、新たな発見が生まれた。小児がんの一種で、副腎などに発生する神経芽腫の患者の尿にはバニリルマンデル酸(VMA)が含まれている。この物質を分解してくれる微生物を見つけだすことで、短時間でより精度の高い診断を可能にした。「学生たちと一緒に、いろんなところに住む微生物を探しました。土を集めてきて、そのなかに住んでいる菌を繰り返し調べていくのです。探し方が適切であればいい菌が見つかりますが、間違っていると見つかりません」。1gの土には1億の菌が生息する。可能性は、無限に広がっている。

理学部 生物化学科
三井 亮司 先生

の新物質が、照明の未来を変えていく。

最近、白熱電球や蛍光灯に代わる次世代の照明器具として、省エネルギーで長寿命な「白色LED照明」が注目されている。この白色LEDを実現する上で欠かせないのが、「LED」(発光ダイオード:電流を流すとさまざまな色の光を発する半導体素子)と「蛍光体」である。蛍光体とは、ある色の光を当てると別の色の光を出す物質であり、いま普及している白色LED照明の多くは、青色LEDと、その青色を吸収して黄色の光を出す蛍光体で白色光を生み出している。しかし“青色LED×黄色蛍光体”による白色光は少し寒々しい印象があり、太陽光のような自然な光にするためには“青色LED×緑色蛍光体×赤色蛍光体”で白色光にすることが望ましい。しかし、青色を吸収して赤色を発する蛍光体というのは非常に少なく、しかも特殊な実験設備を用いなければ作り出せなかった。そんななか、独自の方法で画期的な赤色蛍光体を開発したのが佐藤先生だ。「蛍光体というのは、特定の元素を組み合わせることによって発光する物質。強い赤色を発する元素の組み合わせを試行錯誤の末に見つけ出し、この蛍光体を開発しました。特殊な実験設備がなくても作ることができ、環境にも優しい物質です」。たとえ“天才”でなくても、好奇心を持って地道に研究に取り組めば、世の中を変えるような新材料を発見できる、と佐藤先生。先生の研究室から今後、どんな新物質が生まれてくるのか、大いに期待したい。

理学部 化学科
佐藤 泰史 先生