イテク手術ですべての患者に笑顔を。

臓器移植や腫瘍摘出。かつて難しいと言われた手術も、今は高い成功率に達している。そのすさまじい進歩を支えているのが、医療機器の高性能化。松宮研究室では、主に外科手術で生じる医療ミスを防ぐ装置を研究開発もしている。「今つくっているのは、医師の手元が狂うと、すぐさまセンサーが感知して自動で手を引き戻すというもの。まだ世の中にない装置をつくるわけですから、完成するまで何度も試作機をつくります。機械の動作はもちろんのこと、身体に入っても安全な素材や形状であることも重要。完成までの道のりは険しいけど、ものづくりの先に救える命があると思うとエンジニア魂が燃えてくるんですよね」。テクノロジーの力でひとりでも多くの患者の命を救うこと。それが医工学のゴールだと松宮先生は語る。

工学部 生体医工学科
松宮 潔 先生

る病魔から、記憶を守れ。

ある日突然、新しいことを覚えられなくなったり、昔の記憶が思い出せなくなる恐ろしい病気「アルツハイマー認知症」。その原因は、未だ明らかになっていない。元医師である川端先生は「鉄分の摂取が原因のひとつではないか」とにらんで、研究を続けている。「アルツハイマー認知症の詳しい原因はわかっていないものの、頭の中にアミロイドという異常タンパク質が溜まり、それが神経細胞を壊しているという有力な仮説があります。このアミロイドがつくられる過程で、鉄が関与していることがわかったのです」。鉄と言えば、血液中の酸素を運ぶヘモグロビンをつくったり、私たち人間にとってなくてはならない鉱物。それが、どのように関与しているのか、今まさに解析中だ。人から大切な思い出を奪う憎い病気の、解明が急がれる。

理学部 応用物理学科
川端 晃幸 先生

ルサドバドルで発見、やせるお茶。

大好きなアイスクリームを我慢しても、大嫌いな運動を続けても、なかなかやせられないあなたにうれしいニュースを。植物の成分を病気の予防や治療につなげる松浦研究室で、やせる成分が見つかった。「エルサドバドルで飲まれているお茶に含まれるカレアラクトンという成分です。マウスで実験したところ、1ヶ月で5%も体重が減少しました」。これまでの肥満防止では、満腹中枢を刺激したり、糖質や脂肪の吸収を抑制するものが主流だが、カレアラクトンは細胞の脂肪化そのものを阻害するという。「現在、そのメカニズムを解明中。人体に無害であることがわかれば、将来やせ薬として期待できるかもしれません」。そのお茶を飲みたい、という意見もあると思うが、恐ろしく苦いのでオススメしない。

理学部 臨床生命科学科
松浦 信康 先生

生物地球学部 生物地球学科
久保田 尚浩 先生

山のモモとブドウを、もっと元気に。

岡山は別名「果物王国」と呼ばれるほど、果物の栽培が盛んな土地。なかでも全国的に有名なのが「モモ」と「ブドウ」だ。こうした果物を、もっと美味しく育てるための研究に取り組んでいるのが久保田先生。たとえば、岡山のモモは「白桃」が主流であり、果肉も高級感のある白色で、贈答用として人気がある。しかし、生育過程でその果肉に赤色の色素が蓄積してしまう「赤肉症」という障害がたびたび発生し、農家の方々を悩ませていた。そこで久保田先生は調査を重ね、地上部の枝葉が旺盛に繁っているのに対して、地下部の根の張り方が貧弱な場合、この症状が発生しやすいことを突き止めた。そのほか、ブドウについても、ジベレリンという植物ホルモンを処理して、種なしの食べやすい果粒ができる仕組みなどを研究。キャンパス内では実際にモモとブドウが栽培されている。先生の願いは、こうした研究を通して果物の消費量を拡大していくこと。「私自身も果物が大好き。果物には高血圧や糖尿病などを防ぐ成分が含まれており、健康で長生きできる社会にしていくためにも、世の中の人にもっと果物を食べてもらいたいですね」。

っぱいものが甘くなる? その謎を追え。

「ミラクルフルーツ」という果物をご存知だろうか? 西アフリカ原産の珍しい果物だが、この実を食べてからレモンなどの酸っぱいものを食べると、不思議なことに甘く感じてしまうのだ。その謎を解き明かそうとしているのが、ヒトの味覚についての研究を行っている山口先生。先生によると、ミラクルフルーツの果実には「ミラクリン」というタンパク質が含まれており、この物質がカギを握っているという。「人間の舌には、食べ物の味を感じる『味蕾細胞』が多数あり、この細胞の表面に「甘い」や「酸っぱい」という刺激をキャッチして脳に信号を送る『受容体』があります。ミラクリンが酸と接触すると、甘味受容体がキャッチできる形に変わるのではないかと考えて研究を進めています」。そのために先生の研究室では、遺伝子工学の技術を使い、大腸菌や酵母菌を用いてミラクリンを大量に作り出し、綺麗に精製した後、その形を明らかにしようとしている。「味が変わるメカニズムを解明できれば、いろんな応用がききます。たとえば、身体に良くても酸っぱかったり苦かったりする成分も、甘く感じさせることができれば食べやすくなる。いままでにない健康食品を生み出すことも可能です」。人間が味を感じる仕組みは、まだ誰も完全にわかっていない。だからこそ研究しがいがあると山口先生は語る。

理学部 臨床生命科学科
山口 悟 先生