バクテリアとヒトの闘いを
微生物学の目で解明したい

防は長年続いている

人類が地球に誕生したのは、今から数百万年前。一方でバクテリアは、地球に酸素がなかった30億年以上前から生息していたといわれます。彼らはとてもしたたかで、増殖する能力に長けています。こうしたバクテリアが体内に侵入することで感染症が起こります。けれども、人体だって優れた力をもっています。免疫機能です。したたかに侵入をたくらむバクテリアと、それを阻止しようと頑張る免疫との激しい攻防戦。その実態を、主にガス壊疽菌というバクテリアを通して解明する研究に取り組んでいます。

理学部 臨床生命科学科
櫃本 泰雄 先生

まりは敵を知ること

ガス壊疽菌について説明します。感染症を引き起こすバクテリアで、空気のあるところでは生きられないために、主に土の中などにいます。このバクテリアが傷口から体内に侵入すると、筋肉を壊死させるガスを発生します。最大の特徴は菌の増殖速度です。ヒトの免疫は、侵入者であるガス壊疽菌を退治しようと白血球や抗体で応戦します。しかし菌の増殖があまりにも速いため、白血球による防御が追いつきません。しかも研究を進めていくうちに、ガス壊疽菌は、その白血球の攻撃を阻止するような成分をつくっていることがわかりました。

問があるからおもしろい

これに対してヒトは、傷口を一刻も早く塞ぐためにフィブロネクチンというたんぱく質を出します。ところが、ガス壊疽菌はこのたんぱく質さえもうまく利用します。バクテリアが増殖するためには足場が必要なので、侵入するとフィブロネクチンの粘着力を自分のものにすることで、さまざまな場所にペタペタとひっつき増殖します。ヒトの免疫メカニズムを知っているような侵入劇です。免疫学の進化によってヒトの生体防御機構はわかってきました。しかし、微生物学の視点に立つと、そこにはまだ多くの疑問が残っています。