理大の栞理大50周年



その41[錯覚の使いみち]  解説

 

 今回の問題は、錯視を利用した問題でした。

 このような人の錯視を利用して制作(製作)されたものがごく身近にあります。
 例えば、下の図を見て下さい。@とAは四方を黒または白で描いた長方形ですが、何の変哲もない長方形(または、円)に見えるはずです。ところが、上と左を白に下と右を黒に描いたBでは、なぜか浮き上がって見えるはずです。CはBを逆にすると、今度は沈んで見えるはずです。この錯視は、皆さんもよく利用されているホームページのメニューボタンなどで利用されている技術です。
 人の感覚(5感:視覚・触覚・嗅覚・味覚・聴覚)は、非常に優れているように思われますが、意外に騙されやすいのです。近年ではこの騙されやすい感覚をロボット技術やに応用した研究もあります。

ボタンの錯視

●味覚について
 特殊なメガネをかけ、視覚からはチョコレートのついたビスケットが見えているとします。また、鼻にはそのビスケットが近づくとチョコレートの匂いが漂ってくるような装置がつけられています。そうすると、ほとんどの人は全く味のついていないビスケットを食べてもチョコレート味だと感じてしまいます。昔から嫌いなものを食べるときは、「鼻を摘んで口に入れると食べれる。」と言われています。
 このことを逆説的にいうと、「鼻を摘む」という行為、すなわち嗅覚は味覚に大きく左右するともいえ、嗅覚は味覚を狂わせる作用があることが考えられます。このことに加え、視覚情報にはチョコレートのついたビスケットが見えているため、「今からチョコレートビスケットを食べる。」という思い込みも味覚に影響を与えていると考えられます。

味覚の錯覚

●触覚について
 「1番騙されにくい。」と感じられる触覚にも錯覚はあります。
 例えば、人は大きな加速度に対して敏感に感じ、小さい加速度に鈍感な性質があると言われています。
 この感覚の差異を利用すると、つまり、小さな加速度中に大きな加速度が生じると、あたかも そちらに「引っ張られたような錯覚」が生じます。この錯覚を工学的に利用すると、ゲーム機のコントローラや携帯電話などのバイブレーション機能に方向性を持たせることができるのです。すなわち、ゲーム機の主人公に「引っ張られた」や「押された」という感覚、また携帯電話を持っているだけで「前進しなさい」や「右に曲がれ」など道案内を触覚で教えてくれることも可能になります。

バイブレーション機能の錘の加速度

●聴覚について
 オーディオ好きの方なら、既に実感されていることと思います。限られたチャンネル数(ステレオ・2チャンネル)で、如何にして臨場感を演出するのか。つまり、あたかもコンサート会場にいるかのような感覚を生じさせるように音を提示する。
 こうした手法は楽器がまだ洗練されていなかった時代の音楽にも利用されています。
 最も有名な聴覚に関する例として、途切れ途切れの音に対して途切れている箇所に雑音を挿入することで、スムーズに音が識別できることが挙げられます。人は知らず知らずのうちに雑音を除去し、知っているフレーズや音楽を適用させ、欠如している部分を補間していると考えられています。

 この解説の中で「加速度」の話をしましたが、物理学のなかに「ニュートンの第2法則」があります。この法則は「ある物体にはたらく(合)力は、物体の質量とその加速度の積に等しい。」、つまり、「力=質量×加速度」という式が成り立ちます。人はこの法則を意識している訳ではないでしょうが、「加速度」が大きいとき、大きな力が生じる(危険である)ことを知っているかのように捉えることができます。逆に小さい加速度に対して過敏に反応してしまうと、乗り物に酔ってしまったり、恐怖感をあおったりしてしまいます。そのため、人は小さい加速度にはより鈍感になっているのではないかと考えられます。

 人の5感は感覚器のみに依存しているのではなく、むしろ、それらの情報を用いて脳がどう処理するかに依存していると言えそうです。そう考えると、「人ってすばらしい」と改めて思ってしまいます。

 

提供:工学部知能機械工学科 藤本 真作 先生

ページTOP

岡山理科大学 kouhou(atmark)ous.ac.jp 086-256-8412
Copyright (C) Okayama University of Science.