理大の栞理大50周年



その38[最強の毒]  解説

 

 最強の毒は、野生の世界では、生きものは、捕食者に食べられないように、擬態や体を守る甲羅など、さまざまな自己防御を身につけています。生物毒もそのうちのひとつであり、自らの体の中に毒をもつものがいます。また、我々人間は、その科学文明のなかで、毒性のあるものも作り出してきました。
 現在まで知られているもっとも強い毒は、食中毒の原因菌であるボツリヌス菌がつくる毒素などの細菌毒素です。ボツリヌストキシンのマウスに対する最小致死量は、体重1kgあたり、30億分の1gと報告されています。このボツリヌストキシンは、タンパク質でできている大きな分子の毒です。小さな分子の毒で最強の毒では、マイトトキシンと呼ばれる海洋プランクトンの毒が強く、南洋海域での魚の食中毒であるシガテラの原因毒のひとつと考えられています。
 毒の摂取経路や環境条件などで、致死量は大きく変化するので、単純に、毒性を比較することは難しいのですが、マイトトキシンの場合、マウスでの致死量は体重1kgあたり、およそ2000万分の1g(0.00005mg/kg:mgとは、千分の1gの単位です)程度と推定されています。次に、フグ毒のテトロドトキシンで、0.01 mg/kgで、ヘビ毒α-ブンガロトキシンで、0. 15mg/kgとなります。ボツリヌストキシンは、このように、天然の毒は、猛毒として有名な青酸カリよりもはるかに毒性が高いのです。
 このボツリヌストキシンですが、極微量を、眼瞼痙攣や片側顔面痙攣などの治療薬として用いられています。また、十分に加熱することで、ボツリヌストキシンの毒性は失われますので、よく加熱調理した食品は安全です。

 

提供:理学部生物化学科 林 謙一郎 先生

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