理大の栞理大50周年



その32[世界で一番高い建物]  解説

 

【ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)】
 諸元
  所在地:アラブ首長国連邦 ドバイ
  敷地面積:約10万平米
  延床面積:52.7万平米
  階数:168階
  構造:RC造・上部S造
  施工期間:2004年1月〜2010年1月

 ブルジュ・ハリファには、57機のエレベーターと8機のエスカレーターが設けられています。非常用エレベーターの積載荷重は5,500Kg、25階ごとに気圧が高められ、空調された避難エリアがあります。また、30階ごとに2層分の階高の機械室があり、電気室、給水タンク、ポンプ、空調機などが設置されています。
 一方、ブルジュハリファの建つ敷地周辺には、現在は下水が完備されていないため、ビルの下水はトラックで運び出しています。その量は一日約15トンにのぼるため、下水処理場では、順番待ちのトラックが長蛇の列をつくることもあるとのこと。高層ビルの建設に都市基盤整備が追いついていない負の側面もうかがえます。

【超高層ビルのはじまり】
 19世紀末の米国シカゴで、当時5階建てが高層と考えられていた時代に、倍の高さの建物が建てられ始めました。1885年に竣工した地上10階、高さ55メートルの「ホーム・インシュアランス・ビル」は、それまでの石やレンガを組む工法でなく、鉄骨を組む工法を用いることで、著しい高層化が可能になりました。1888年のエジソンによる白熱電球の発明、それに続く電気の普及により、それまで蒸気を動力源としていたエレベーターが電動となりました。また、鋳鉄に代わり、鋼鉄の技術が開発され、ビルの高層化が進みました。
 1920年代になると、近代建築の三大巨匠らも超高層ビルの設計案を発表しています。ミース・ファン・デル・ローエは、1921年に、ビルのファサード前面をガラスで覆う「フリードリヒ街オフィスビル」案や「鉄とガラスのスカイスクレーパー」案を設計競技等に発表しています。ル・コルビュジェは、1922年に、「300万人のための現代都市」案を発表しています。フランク・ロイド・ライトは、1956年に、高さ1マイル(1600メートル)、528階建ての「マイルハイ・タワー」の構想をシカゴ市に提案しています。
 1950年代に入ると、1952年に国際連合本部ビル(ウォーレス・K・ハリソン)、1958年にシーグラムビル(ミース・ファン・デル・ローエ、フィリップ・ジョンソン)などの高層ビルの記念碑的作品が建てられています。その後は、後述のように、世界各地に高層ビルが現れるようになりますが、高層ビル黎明期に生まれた革新的な概念やデザインの達成は、今なお輝きを失っていません。

【超高層ビルの分布】
 1980年代までは、超高層ビルの多くは米国で建設されていました。1990年代に、中近東の産油国で超高層ビルラッシュが始まりました。特に、アラブ首長国連邦のドバイの大規模開発がよく知られていますが、2008年9月からの世界同時金融危機の影響で、現在では計画の中止や見直しなども行われています。

高層ビル高さ上位200位の国別分布
(2011年現在、建設中のものを含む)
国  名棟数 (うち1989年以前建設数)
中国53
米国41(35)
アラブ首長国連邦35
香港15
韓国10(1)
オーストラリア5(1)
カナダ4(3)
シンガポール4(1)
マレーシア4
ロシア4(1)
サウジアラビア3
日本3(1)
カタール2
クウェート2
ドイツ2
バーレーン2
ベトナム2
インドネシア1
北朝鮮1
スペイン1
タイ1
台湾1
トルコ1
パナマ1
フィリピン1
マカオ1
Emporis World's tallest buildings - Top 200 (http://www.emporis.com/statistics/worlds-tallest-buildings)より筆者作成

【高層ビルの地震・風・火災対策について】
・地震対策について
 地震対策には、「耐震」、「免震」、「制震(制振)」があります。
 「耐震」とは、柱や梁や壁などの構造部材によって、強度と粘りで揺れに耐える方法のことです。
 「免震」とは、建物と地盤との間に緩衝装置を入れ、地面の揺れを建物に直接伝えないようにして揺れを免れる方法です。免震装置には、ゴムの薄膜と鉄板を積層させた積層ゴムや、すべり材やベアリングを用いる装置などがあります。
 そして、「制震(制振)」とは、ダンパーなどの制震装置により揺れに抵抗、あるいは揺れを吸収することで、揺れを小さくしたり、揺れが止まるまでの時間を短縮したりして揺れを制御する方法です。高層ビルの場合、地震だけでなく風による揺れにも「制震」が有効です。超高層ビルの風による揺れの周期は5秒程度とゆっくり揺れるため、制振対策が十分でないと、いわゆるビル酔いが生じることもあります。
 地震による建物の変形は、「耐震」だと大きく、「免震」と「制振」は小さくなります。特に「免震」の建物は、地震による変形が小さく、ゆっくりと揺れるので家具や什器の転倒も起こりにくくなります。したがって、地震による損傷が小さく、補修が軽微で済むので、長寿命につながる対策といえます。
 ブルジュ・ハリファでは、80MPa(N)の高強度コンクリート(一円玉の面積で約2.5トンの重さに耐える強度。一般に使用される普通コンクリートは24〜26Mpa)が用いられているとのことですが、免震構造は採用されていません。基礎には、3.7m厚のマットスラブと50m以上の深さに打ち込まれた直径1.5mの192本の鉄筋コンクリート杭が用いられています。
・耐風対策について
 建築基準法で60メートルを超える建物は、風方向だけでなく直角方向やねじれ方向の揺れについても考慮して計画することが定められています。平面形状について、角を切り欠いたり丸めたりすると、直角方向の揺れを軽減することができます。下層から上層まで同じ幅のビルは特定の風で直角方向に揺れやすいので、上層ほど幅を小さくする方法が用いられることもあります。
 ブルジュ・ハリファでは、建物の角を丸める、表面に凹凸を付ける、上層ほど風を受ける面積を小さくするという方法で、風の影響を抑えています。
 また、高層ビルは、「カーテンウォール」とよばれる、カーテンのようにビルの外周部に吊り下げる外皮を持つものが一般的です。カーテンウォールの長所は、軽く、風圧に耐える耐力をもち、地震や風による揺れや、構造材の変形を直接受けません、また、施工時に足場が不要である点が挙げられます。ブルジュ・ハリファでもアルミとガラスによるカーテンウォールが用いられています。
・火災対策について
 火災対策には、一定面積毎に火熱に強い壁や扉で区画することで、火災を一定の区画内に閉じ込める「防火区画」、強制的に煙を排出する「排煙設備」(超高層ビルではファンなどを用い煙を排出する機械排煙方式が用いられることが多い)、階段の前に付室を設けることにより、火災で発生した煙を階段室に侵入しにくくする「特別避難階段」、消防隊が消火活動に用いるエレベーターで、火災で停電しても非常用電源により運転できる「非常用エレベーター」(通常時は荷物やゴミ等を運搬するサービス用として使用される)、そして、火災の発生を自動的に感知し、防災センターに火災信号を送り、避難誘導や防災、消防用設備作動を開始する「煙・熱感知器」や「スプリンクラー」などがあります。

 

提供:工学部建築学科 松下 大輔 先生

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