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その6[顕微鏡]  解説

 

透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM(図1))は、電子線をとても薄くした材料に投射し、透過した電子を用いて、材料の内部構造を観察する装置です。1931年にドイツのクノールとルスカにより開発されました。

図1. 透過型電子顕微鏡
(岡山理科大学総合機器センター)

通常の光学顕微鏡では、照明に可視光を用いるため、可視光の波長(400〜800nm(ナノ・メートル))よりも小さなものは観察できません。倍率では1000倍程度が限界となります。この限界を破ったのが、クノールとルスカです。彼らは光よりも波長の短い電子線を照明に用いました。

例えば、加速電圧が100kV(キロボルト)の電子顕微鏡では電子線の波長は0.0122nmとなり、可視光の波長の約50,000分の1に相当し、それだけ分解能が上がることになります。観察できる倍率は一気に上昇し、10万〜100万倍で材料を観察できるようになりました。尚、電子線は空気中の分子に衝突すると直進できないため、TEMの鏡体内は、極めて高い真空度に保たれています。従って、植物の細胞を観察するには特殊な処理が必要となります。

ところで、皆さんはブラッグの反射条件というのをご存知でしょうか? TEMの中で電子線を結晶に投射すると、電子線は平行ないくつかの格子面(原子のつくる面)にて反射し、同じ方向に進むものが互いに干渉し合います。いま、電子線の波長をλ(m)、格子面間隔をd(m)とすると、 図2の A → B → C(図中の○は原子)と、A' → B' → C' の経路差は DB'E = DB'+B'E = 2d sinθ となり、m を整数とすると 2d sinθ=mλ の関係が成り立つとき、電子線は強め合います(電子線回折像では回折スポットが見られる)。この関係をブラッグの反射条件といい、d を求めることができます。d は、個々の材料の結晶によって決まっているので、d が判れば、材料の種類を特定することができます。図3は、アルミニウム合金の結晶から得た回折スポットです(白い点)。

図2. ブラッグの反射条件
図3. アルミニウム合金の電子線回折像

TEMは、材料の種類や原子レベルの極めて小さい組織を観察することができ、 近年のナノテクノロジーの開発において、とても重要な装置のひとつとなっています。

 

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