理大の栞理大50周年



その5[]  解説

 

泡と表面張力

水(のような液体)の表面には表面張力という力が働いています。表面張力とは、簡単にいうと、表面を縮める力/表面積を最小にしようとする力で、水分子どうしが引っ張り合うことで生じます。この力によって、コップいっぱいに入れた水はコップの縁で盛り上がり(写真1)、葉の上の水滴や水道の蛇口からポタポタ落ちる水滴は丸くなります。丸くなることで、水は空気との接触面積を小さくしているのです。

写真1:表面張力によってコップの縁からこぼれずに盛り上がる水

表面張力の強さは、例えば、水の表面に接触させた白金リングを水の表面から引き離すのに必要な力を測るとわかります(写真2と写真3)。写真2はシャーレに入れた水の表面に白金リングを接触させたところです。写真3は水が白金リングを引っ張っているところです。この引っ張る力が表面張力です。リングが水の表面から離れた瞬間の力を測定することで、表面張力の値がわかります。水の表面張力は、72.8 mN/m(20℃)です。この値は、水の表面に界面活性剤分子がくっつくと小さくなります(どれくらい小さくなるかは、界面活性剤の濃度や種類によって異なります)。

写真2:シャーレに入れた水の表面に白金リングを接触させたところ。
白金リングを垂直に引っ張り上げると… (写真3につづく)
写真3:白金リングを引っ張り上げたところ

一方、界面活性剤は、分子中に水っぽい部分(親水基)と油っぽい部分(疎水基)を両方もっていて、水にも油にも溶ける化合物です(図1)。図1はドデカン酸ナトリウとよばれる界面活性剤の構造式です。ドデカン酸ナトリウムは脂肪酸のナトリウム塩ですから、通常、セッケンと呼ばれる界面活性剤の1つです。また、図に示すように、界面活性剤は“おたまじゃくし(またはマッチ棒)”のように表します。“おたまじゃくし(またはマッチ棒)”の頭の部分が親水基、尾(じく)の部分が疎水基です。界面活性剤は分子どうしが集まって集合体(ミセル)を形成したり、様々な物の表面(例えば、水の表面)にくっついたりして、特異的な機能を発揮します。界面活性剤分子は、水の表面にくっつくだけでなく、水中にもたくさん溶けています。

図1:ドデカン酸ナトリウの構造式

水に溶けた界面活性剤分子は、親水基を水側、疎水基を空気側に向けて、水の表面にくっつきます(図2)。すると、水の表面張力が低下します。これは、水分子どうしの引っ張り合う力を界面活性剤分子が弱めるからです。水の中に空気(気泡)があると、界面活性剤分子は、水の表面にくっつく場合と同じように、疎水基を内側の気泡に向け、内部に空気を包み込むように並び、さらに、その外側にもちょうど反対向きに並びます。すると、空気を包んだ薄い水の膜ができます。これが1粒の泡です(図3)。シャボン玉の構造もこれと同じです。このようなものがたくさん集まって、通常の泡はできています。界面活性剤の分子が上手に水の薄い膜を作っているので、しばらくの間、泡は消えません。

図2:水に溶けた界面活性剤分子(界面活性剤イオン)が
水の表面にくっついている様子の模式図

まとめると次のようになります。界面活性剤分子は水の表面、正確には水と空気の境界面(気―液界面)にくっつきます(吸着します)。界面活性剤分子が吸着すると水の表面張力が低下します。すると、表面は広がりやすくなります。さらに界面活性剤は、親水基どうしを向かい合わせにして2層に並び、その間に水の薄い膜を作ります。これが泡です。泡ができると、結果的に、水と空気の接触面積が大きくなることがわかります。

図3:1粒の泡の構造の模式図

出典/参考文献

  • 北原文雄著、“科学のとびら28 界面活性剤の話” 東京化学同人(1997).
  • 近藤 保、鈴木四郎、“やさしい コロイドと界面の科学 第2版” 三共出版 (1992).

 

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