岡山理科大学 IB教員養成コース

[対談]岡山理科大学から世界へ

[対談]岡山理科大学から世界へ これからの先生を考える

岡山理科大学の国際バカロレア(IB)教員養成コースが認定されたのを受けて、国際バカロレア機構(IBO)アジア太平洋地区委員の坪谷ニュウエル郁子さんと、学校法人加計学園の加計役・副理事長が、その意義などをテーマに対談しました。(文中敬称略)

-グローバルに活躍できる日本人を養成-

-世界が求める理数系IB教員-

加計
グローバルに活躍できる人材育成に向けて、国はIB認定校を200 校とする計画ですが、世界の現状を紹介してもらえますか。
坪谷
そもそもIBは1968 年にスイスで誕生しました。国際機関が多く、親と一緒に来た様々な国々の子供たちのために、世界共通の成績証明書が必要になったからです。それが今では140 を超える国と地域に広がり、認定校は世界中で4500以上と急激に増え続けています。このプログラムを修了した生徒のデータが蓄積されてきたことも大きな理由で、優秀な生徒が多かった。アメリカでは特典まで付けて呼び込もうとしている大学もあります。
加計
岡山理科大学でも取り組んでいますが、日本でもIBDPの成績を入試に活用する大学が増えてきていますね。
坪谷
スーパーグローバル大学の関係もありますが、ここ数年飛躍的に増加する傾向となっています。全学部で導入しているのが筑波大学、京都大学など。一部学部が東京大学、東京外国語大学、大阪大学など、導入予定・検討中も含めると40以上に上ります。
加計
加計学園グループでは、英数学館(広島県福山市)が10 年前に英語イマージョン教育をスタートさせた時から、IBを見据えていました。英数学館高校が2016 年6月、IBDPの認定を受けたのに続いて、今回、岡山理科大学でIB教員養成コースが認定されたことで、さらにグローバル人材養成に向けて弾みをつけたいと考えています。それには日本語による授業、また卒業試験も日本語で可能という「日本語DP」の導入が大きかったと思います。これについて背景などを解説していただけますか。
坪谷
プログラムの学び方と教え方は同じです。日本の生徒たちが自由に操れる日本語でDP教育が受けられたら、多くの子供たちを育てられます。全ての課目において母語の方が第2言語より深い考察が可能になります。特に必修となっていて知識の本質について考える「知の理論」では正にそうなると思います。ただアメリカの大学に留学しようとすると、大学によってはIBDPだけでなく、TOEFLのスコアも添付するよう求めるケースもあります。イギリスやオーストラリアでは、英語の知識が不足している場合、ファンデーションコースと言って、1年間英語を勉強するコースもあります。日本語DPはIBOにとっ て少数言語による初のプログラムで、これが順調にいけば、今後、例えばベトナム語、カンボジア語など他の言語でも可能になってきます。
加計
岡山理科大学が認定を受けたIB教員養成コースは、日本の大学では大学院には既にありますが、学部では本学が初の認定です。IB教員は、 数年に一度3日間のワークショップに参加して継続できますが、本コースでは、在学期間を通じて学習するため、質、時間ともにより深い学習がで きると思っています。また、理数系の教員免許を 持っているIB教員が世界的に少ないという現状を見ても、理数系教員を多数輩出している本学の実績を考えると、貴重な存在になる可能性があります。
坪谷
その通りですね。やはり学部学生の方が絶対数が多いし、教員になる数も多い。大学院となると、やはりハードルが高い。卒業するまでにこのプログラムの学び方を覚えていくことには二つのメリットがあると思います。まず世界共通の学び方、教え方を学ぶことによって働く先が世界市場になります。というのは日本でIB教員を10 年、20 年やって引退する時に余生を例えばタイで、と考えた時に現地でも教えることができます。その国の言葉で教えられれば世界中が就職先になります。実際、中東ではIB認定校がすごい勢いで増えていて、IB教員を破格の条件で各国から集めています。二つ目は教職ではなく、企業に就職した場合においても、社内でどのようにリーダーシップを取っていくのか、など社会に出た時に非常に役立つことが多いと思っています。
加計
IBDPについて産業界はどうみているのでしょう。
坪谷
2013 年6月に経団連が「グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言」の中で、少々長いのですが引用すると、「語学力のみでなく、コミュニケーション能力や異文化を受容する力、論理的思考力、課題発見力などが身につくIBD Pはグローバル人材を育成する上で有効な手段の 一つである」「DP取得者に対する社会における適切な評価も重要であり、大学入試における活用や企業も採用時や人材活用において適切に評価することなどが重要」としています。
加計
浸透するにはまだ時間がかかりそうです。

-経済界もIB教育評価の方針を打ち出す。-

坪谷
英国では就職試験の時にDPのスコア、それも科目別のスコアも提出を求めているケースも多いようです。卒業生が増えてくれば、日本もそうなってくると思います。また、将来の話をすれば、高校生に大学1年時の教養レベルの教育機会を提供するために米国で実施されている「AP(アドバンストプレイスメント)」、イギリスの大学入学資格として認められる統一試験「Aレベル」などがありますが、こうしたプログラムやDPも含めて、例えばDPで40 点なら、AP、Aレベルで何点、というスコアの換算表が整ってくれば、世界の中であなたの学力はこうですよ、という時代がやって来るだろうと思っています。そうすれば、日本の大学というのは実はレベルが高いよね、というところも世界に見せられると考えています。
加計
IBプログラムには「探求する人」「考える人」「挑戦する人」など、目指す10 の学習者像が明示されていますが、DP(16 〜19 歳)だけじゃなく、MYP(11 〜16 歳)、PYP(3〜12 歳)のプログラムを通して、教員、保護者、学校などが一体となった取り組みが求められます。
坪谷
日本人は海外に出た時に論理立てて発信できない。「沈黙は金」と言いますが、何で「金」なのかを説明しなくちゃいけない。日本は教育・ しつけ、治安など多くの面で素晴らしい国だと思います。ただ、発信していく力、価値観が違う意見をまとめていく力など、これまで日本の教育に欠けていた力を身につけていこうというのが、このプログラムです。IBを教えられる教員は世界中が欲しがっています。岡山理科大学に大いに期待しています。
加計
ありがとうございます。知恵を絞り、工夫を重ねて世界で活躍できるようなIB教員を育てていきたいと思います。

坪谷ニュウエル郁子
神奈川県茅ケ崎市出身。イリノイ州立西イリノイ大学修了、早稲田大学卒。1985年イングリッシュスタジオ(現・日本国際教育センター)設立、代表取締役就任。1995年東京インターナショナルスクール設立、代表就任。2012年国際バカロレア機構アジア太平洋地区委員就任。一般財団法人・世界で生きる教育推進支援財団の代表理事も務めている。

加計 役
千葉県柏市出身。米国フィンドリー大学経営学修士(MBA)取得。
2000年に加計学園に入り、2011年より加計学園副理事長就任。広島加計学園理事長、吉備高原学園学園長なども兼務。
一般財団法人・世界で生きる教育推進支援財団理事も務めている。